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環境と葬儀

ダンボール製コフィンの燃焼について
( 2003 年10 月火葬研究協会大会発表)
Study on burning of Coffin which is made from corrugated cardboard.
○増田進弘*1

**環境にやさしいエコ棺エコフィン[ノア]をより良くする為に、私たちは燃焼実験を繰り返し行い、得られるデータをもとに改善し、より良い製品づくりを目指ししています。
以下は2003年に開催された火葬研究協会で発表した内容です。

1.はじめに
 現在、環境への取り組みは世界的な規模で、生活の様々なレベルで実施されている。また、企業も環境を意識した資材調達と製品開発なくしては、成立しない時代になっている。しかし、葬祭業界に於いては、あまり環境について取り組まれていないのが実情である。超高齢化社会を迎え、今後数十年にわたり死亡者数は増加し続けて行くことからも環境に優しい製品開発は急務である。
 火葬時の環境問題について、これまで副葬品については議論されているが、柩(以下コフィン)に関してあまり例が無い。一般的な木製コフィンの重量は 20kg 程度あるため、燃焼が環境に与える影響が全く無いとは言えない。そこで国内で通常使用されている合板製コフィン(ベニヤ製フラッシュ構造)とコフィンを、それぞれ実際に使用されている火葬炉で燃焼させ、燃焼状況や環境性等について調査、分析を行うこととした。得られた結果をもとに、今後の特殊三層ダンボール製コフィン製品開発のための資料を得ることも目的とした。

2.実験の方法
現在最も普及している合板製フラッシュ構造コフィン(以下合板製コフィンとする)とダンボール製コフィン(トライウォール社製特殊三層ダンボールを使用したウィルライフ社開発コフィン:以下ダンボール製コフィン)、それぞれ実際に使用されている火葬炉で燃焼させ、燃焼時間、燃焼状況、排ガスの状況について比較を行った。

1)燃焼実験概要
実験施設:横浜市営北部斎場
実験日時:平成15 年9 月9 日 15 時~17 時
使用火葬炉:11 号炉(合板製コフィン)
      12 号炉(ダンボール製コフィン)
燃 料:都市ガス
条 件:合板製コフィン及びダンボール製コフィンのデザインはそれぞれ山型または
平棺と異なるが、主材以外の外部の仕上げは全て同一のとした。

2)確認項目
①燃焼による残渣の比較
燃焼終了後、目視による確認
②燃焼時間
火葬炉設備操作盤の表示により確認
③燃焼温度変化
火葬炉の記録計のトレンドにより確認
④排ガスの状況
火葬炉の記録計のトレンドにより確認

3.ダンボール製コフィンと合板製コフィンの素性比較
 現在、葬儀市場で使用されているコフィン素材は、天然木(桐、杉、檜など無垢材)と合板(表面材にはプリント、天然杢突板、布などがある)の大きく二つに分けられ、市場の 80%以上は合板製である。
 合板製は天然木製と比較して加工しやすい事とコストが低いことがこれまでの普及要因である。そこで最も普及している合板製コフィンを選定し、段ボール製コフィンを比較した。それぞれの特徴を表 1に示す。
 今回使用したダンボール製コフィンの材料はヴァージンパルプ(北米産南部松)+古紙。インターナショナルペーパー社により持続可能な生産・管理された森林の木材を使用している。接着剤は天然澱粉を使用している。1㎥の木材から1800×500×400のコフィンが約 54 本製作可能である。樹皮や木質部より抽出された有機物質リグニンは、生産時の燃料として利用される。
 端材は 100%リサイクル可能である。シートはほとんどが木質繊維で、C(炭素)6・H(水素)12・O(酸素)6 の構成で、合板の木質分と同じだが、リグニン分が少ない分燃焼エネルギーは低い。しかし化学構成に酸素を含んでいることから燃えやすい。さらに中芯が波状になっていることから、合板より燃焼速度は速い。燃焼実験に先立ち 75kg の人間が柩運搬車上にあるコフィン内に入ったが強度的な問題はみられなかった。
 合板製コフィンの材料は、ラワン材など南洋材または中国産ポプラ材など広葉樹。南洋材は、伐採地の環境破壊や地球温暖化などの問題が問われている。
 接着剤はフェノール樹脂系、ユリア(尿素)樹脂系、メラミン樹脂系の接着剤を目的に応じて使用している。1㎥の木材から 1800×500×400 のコフィンが約 36 本製作可能である。これには端材のロス部分は考慮していない。
 南洋材の場合、大径の原木からスライスしたものを合板に加工する。しかし最終的に原木の芯部分20cm(比率 30%)ほどのロスが出る。ロス部分はボイラーで焼却し熱源として利用されている。
合板は C(炭素)6・H(水素)12・O(酸素)6で構成される。木質成分にリグニンが相当含まれているので、燃焼エネルギーは高い。合板の各層に使用される接着剤にフェノール樹脂系、ユリア(尿素)樹脂系、メラミン樹脂系が使用され、燃焼エネルギーは高いが窒素分を含んでいる。

ダンボール製コフィンと合板製コフィンの素材比較
ダンボール製コフィン
(素 材)ヴァージンパルプ(北米産南部松)+古紙。インターナショナルペーパー社により持続可能な生産・管理された森林の木材を使用。
(接着材)天然澱粉使用
(原木 1 ㎥で生産される量)
㊟1 紙生産 266kg
㊟2 TW 1300G シート 218 ㎡生産
(利用効率)
樹皮や木質部より抽出された有機物質リグニン㊟3は、生産時の燃料として利用される。
(1㎥から製作できるコフィン数)(1800×500×400 のコフィンを製作した場合)
約54 本
(端材について) 100%リサイクル可能。 RESYマーク 廃棄処分
(燃焼について)
TW製シートはほとんどが木質繊維で、C(炭素)6・H(水素)12・O(酸素)6 の構成で、合板の木質分と同じだが、リグニン分が少ない分燃焼エネルギーは低
い。しかし化学構成に酸素を含んでいることから燃えやすい。さらに中芯が波状になっていることから、合板より燃焼速度は速い。
(外観写真)
photo1_03.jpg

合板製コフィン
(素材)ラワン材など南洋材または中国産ポプラ材など広葉樹。南洋材は、伐採地の環境破壊や地球温暖化などの問題が問われている。
(接着材)
フェノール樹脂系、ユリア(尿素)樹脂系、メラミン樹脂系の接着剤を目的に応じて使用。
(原木 1 ㎥で生産される量)
3㎜厚ベニヤサイズ:3×6版 140 枚(約232 ㎡)
(利用効率)
南洋材の場合、大径の原木からスライスしたものを合板に加工する。しかし最終的に原木の芯部分20cm(比率30%)ほどのロスが出る。ボイラーで焼却し熱源として利用。
(1㎥から製作できるコフィン数)(1800×500×400 のコフィンを製作した場合)
約36 本 (ロス部分は考慮していない)
(端材について) 廃棄処分
(燃焼について)
合板はC(炭素)6・H(水素)12・O(酸素)6 の構成。木質成分にリグニンが相当含まれているので、燃焼エネルギーは高い。しかし、合板の各層に使用される接着剤にフェノール樹脂系、ユリア(尿素)樹脂系、メラミン樹脂系が使用され、燃焼エネルギーは高いが窒素分を含んでいる。
(外観写真)
photo2_03.jpg

㊟1 製紙用原木は1㎥=1t で水分50%、木質部50%。密度0.95 とすると、木質部は950kg×50%=475kg。この木質部よりパルプは56%取れる。475kg×56%=266kg。
㊟2 TW1300 シート構成(単位:1㎡あたりのg 数)
表・裏ライナー 935 ヴァージンパルプ
中ライナー 100 (ヴァージンパルプ )300(古紙)
中 芯 185 (ヴァージンパルプ ) 554(古紙)
合 計 1220 (ヴァージンパルプ )854(古紙)
㊟3 木材・竹・藁(わら)など木化した植物体中に 20~30%存在する芳香族高分子化合物。セルロースなどと結合して存在し,細胞間を接着・固化する。

ダンボール製コフィンと合板製コフィンの燃焼状況の比較
ダンボール製コフィン
(残渣について)
段ボール製コフィンは残渣が多いとこれまで言われてきたが、今回のテストでは台車上ほとんど見られない。タッカーが炉床に残る。
photo3_-3.jpg

(燃焼時間 )20分間。約10分間で燃え尽きた。
(燃焼温度変化)
点火後、コフィン全体が燃え出し、合板製に比べ燃焼温度変化のカーブは急勾配
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(排気ガス変化)
合板製に比べ、NOx、SO2、CO など全てにおいて少ない。完全燃焼し炉内での黒煙は見られない。
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合板製コフィン
(残渣について)
一部木炭化したものが見られる。また、組立に使用する釘及びタッカーが炉床にそのまま残る。
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(燃焼時間 )
20分間。時間内でほぼ燃え尽きた。
(燃焼温度変化)
点火後一気に燃え上がるように見えたが、ダンボール製と比較して温度変化がゆっくりである。点火後、コフィン全体が燃え出し、合板製に比べ燃焼温度変化のカーブは急勾配
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(排気ガス変化)
NOx 濃度がダンボール製と比べ約3倍の数値を見た。SO2、CO 濃度も高かった。点火後、炉内に黒煙が立ちこめた。CO が点火後急激に上昇した。
*上記排ガス変化データを参照
* 燃焼温度、排気ガスについては、横浜市北部斎場で得られたデータで比較。
㊟4 NOx 窒素酸化物
一酸化窒素(NO)・二酸化窒素(NO 2 )など窒素酸化物の総称。自動車の排ガスや工場設備などから発生し,大気汚染の原因となる。ノックス。
㊟5 SO2 二酸化硫黄
硫黄や硫黄化合物が燃焼したときに生じる無色で刺激臭のある気体。化学式SO 2 呼吸器を強く刺激してぜんそくを起こしたり、酸性雨のもとになるなど公害の原因物資となる。還元作用が強く、パルプ・砂糖・毛・絹・麦わらなどの脱色・漂白に用いる。硫酸の製造原料として重要。無水亜硫酸。亜硫酸ガス。
㊟6 CO 一酸化炭素
無色・無臭の気体。化学式 CO 水に溶けにくい。木炭・燃料用ガスなどの不完全燃焼によって発生する。猛毒。点火すると青い炎を出して燃え二酸化炭素になる。還元剤に用いる。メチルアルコール・ホルマリンなどの製造原料。

4.燃焼実験の結果
 横浜市営北部斎場の火葬炉は排気系列が2炉1系列である。同排気系列の11 号炉(合板製コフィン)と 12 号炉(ダンボール製コフィン)を使用し、それぞれを燃焼させ、燃焼状況を目視による観察と火葬炉設備に設置されている排ガスの測定機器のデータをもとに比較した。
 ダンボール製コフィンは残渣が多いとこれまで言われてきたが、今回のテストでは実験終了後に残渣は台車上ほとんど見られなかった。しかしタッカーが炉床に残った。20 分間燃焼させたが点検口から覗くと 10 分ぐらいで柩全体が燃え尽きた。点火後は合板製柩に比べて柩全体に炎がまわるのが遅く見えたが、温度の上昇は早かった。排ガスの状況をみると、合板製に比べ、NOx、SO2、COなど全てにおいて少なかった。完全燃焼している様子で炉内での黒煙は見られなかった。
 合板製コフィンの場合は、20 分間の燃焼で完全燃焼しているように思えたが、台車を引き出すと一部木炭化したものが残っていた。また、組立に使用する釘及びタッカーが炉床にかなり多く残っていた。ダンボール製コフィンより多くのタッカーが使用されていた。点火後、一気に燃え上がるように見えたが、ダンボール製と比較して温度変化がゆっくりであった。NOx濃度が、ダンボール製と比べ約3倍の数値であった。SO2、COの発生も多かった。点火後、炉内に黒煙が立ちこめCOの濃度が急激に高くなった。合板に含まれている接着剤の影響などが考えられる。

5.まとめ
素材の比較及び燃焼状況の比較より、トライウォール社製特殊三層ダンボールを使用したウィルライフ社開発コフィンは合板製コフィンと比べ次のような結果が得られた。
1) 資源の有効活用の面からも有利である。
2) 燃焼時間が短いことから、燃焼エネルギーの節約となる。
3) ダンボール製コフィンの残渣はきわめて微量で、合板製コフィンより少なかった。
4) 排気ガスに関して、ダンボール製コフィンはNOX、SO2、CO など全てに合板製コフィンと比較し微量である。
 今回実験を行ったダンボール製コフィンは燃焼状態も良く残渣がみられなかった。環境問題に充分に応えられる結果を得ることが出来た。
 現在コフィンは、国内葬儀市場の要求から激しいコスト競争により、そのほとんどが他の産業に見られるように中国で製造されている。燃焼状態からその主材の合板がコスト優先で日本国内の合板から比べると品質または接着剤などに問題点があると考えられる。しかし、コフィン全てを今回テストを行ったダンボール製コフィンとするのは無理があり、生活者のニーズに応えることは出来ない。
 従って合板については、計画的に生産でき成長の早い中国産のポプラ材などを主材にし、さらに環境にやさしい接着剤に変更することが急務であると考える。また、今後の取り組みとして、両素材のもつ長所を組み合わせコフィンの商品化することも有効であると思われる。
 また補足として、木製に限らず作業性をあげるためにタッカー(ホッチキスのようなもの)を組立加工に多用している。そのタッカーが燃焼後に台車上に多く残っていた。拾骨の際の見た目の問題もあるため、職員が拾骨前に取り除く光景がみれる。職員の作業量の増加につながっている。金属製のタッカーに代わるもので燃焼してしまう素材を使うか、加工方法の改良によりタッカーを減少させることが必要であると考える。コスト優先だけで考えるのではなく、環境問題も視野に入れる必要がある。ダンボール製とする場合でも規格にあった素材を選ぶことが重要である。
 コフィンは遺体を収めるためのものであるため、デザイン性も重要となる。ダンボール製コフィンもそのようなデザイン性も要求される。
 最後に、以前再生紙が普通紙に比べコストが高く利用が少なかった。しかし、古紙再生技術の進歩や行政や企業の環境への意識変化により、総需要も増えコストも普通紙とほとんど変わらなくなった。環境に優しい素材やコフィンはメーカーの取り組みだけでなく、環境という世界的な課題であるだけに、行政の指導や利用する葬祭業者による官民協力のもとで推進する必要がある。

◇ 謝辞◇
本研究を実施するにあたり、ご協力頂きました横浜市衛生局殿各位、火葬研究協会各位に
深く感謝の意を表します。
*1 ウィルライフ
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